いまは「まつうら」と読む家が多うございますが、古くは「まつら」と申しました。どちらも正しい読みでございます。
肥前国松浦郡――いまの佐賀の北から長崎にかけての、海に開けた土地でございます。『和名類聚抄』にも「まつら」の郡の名が見えております。
この地に拠った武士たちが、土地の名をそのまま家の名といたしました。船を操り、海を渡ることに長けた一族で、のちに松浦党と呼ばれる集まりを成しております。
その松浦党の出どころには、二つの伝えがございます。
ひとつは、嵯峨源氏の流れとする伝えです。渡辺綱の後裔にあたる源久(みなもとのひさし)が肥前へ下り、この地を領して松浦を名乗った、という筋でございます。
もうひとつは、もともと松浦郡に根を張っていた在地の家々が、のちに源氏の系につながる形に整えられた、という見方でございます。
どちらであっても、松浦の海に生きた家であることは変わりません。
「浦」とは、海が陸へ入り込んだところを申します。もとは「まつら」という音が先にあり、そこへ「松浦」の字が当てられ、やがて字のとおりに「まつうら」とも読まれるようになりました。音が先、字は後――姓では、よくあることでございます。