寒露のころ 菊花開(きくのはなひらく)
拍手(かしわで)の打ち方と使い方——邪氣を祓い、場の氣をはかる先人の智恵
神社での拍手は、感謝の表現だけでなく、邪氣を祓い神さまをお呼びする作法です。右手を少し下げて打つ正式な打ち方と、山や川、自宅、旅先で場の氣をはかる使い方をお伝えします。
この記事の答え
拍手(かしわで)は、両手を合わせたあと右手を左手の第一関節分ほど下げて打つのが正式な作法で、合掌のまま打つのとはまったく違う高く澄んだ音が出ます。私は、この音が邪氣を祓い、その場を神聖な状態に変える働きを持つと受け止めています。神社だけでなく、山の岩や川や海、自宅の中心、旅先の宿でも使える動作で、掃除の前後や場所ごとの音の違いを聞き比べることで、その場の氣の状態を自分でたしかめることができます。
拍手と聞くと、何かうれしいことがあったときの動作を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。コンサートの終わりに「素晴らしかった」「ありがとう」の氣持ちを込めて手を打つ、あの拍手です。ここまでは「はくしゅ」と読んでいただいたと思いますが、同じ字を「かしわで」と読む使い方があります。「柏手」と書かれることもありますが、本来は「拍手」と書きます。
神社にお参りするとき、2礼2拍手1礼の作法をされると思います。このときの拍手には、感謝を表すだけでなく、邪氣を祓い、神さまをお呼びするという意味があります。そして実は、神社にいるときだけでなく、どこでも使える動作なんです。
01右手を少し下げる、正式な打ち方
まず両手を胸の高さで合わせ、心を落ち着けます。次に、右手を左手の第一関節分ほど下に引きます。日本では古くから左を上位とします。私が学んだ作法では、これにならって左手を神さま、右手を自分に見立てます。右手を少し下げることで、自分がへりくだり、神さまに敬意を表す形になります。この状態で打つと、合掌のまま打ったときとはまったく違う、高く澄んだ音が出ます。一度、2つの音を聞き比べてみてください。違いははっきり分かります。
打つ回数は、私が学んだ流れでは出雲大社と同じ4拍手を用いています(流派によって違いがあります)。2回目、3回目、4回目と打ち、最後にずらしていた指先をそろえて合わせます。これは自分と神さまが一体になるという意味です。4度打つことには、東西南北の四方を浄めるという意味もあると、私は教わっています。
02山や川、岩の前で打ってみる
人は言葉を持つ前の時代、「音」でつながっていたのだと私は受け止めています。人と人だけでなく、人とものや、人と神さまとの関係も、音を通じて結ばれていた。その名残が、神社の拍手に残っているのだと思います。
山登りで大きな磐座(岩)に出会ったら、その前で拍手を打ってみてください。一瞬でその場が神聖な場に変わります。川でも海でも同じです。自然を相手に拍手を打つと、自分の中の不要なものが流れ出し、自分という器がきれいになります。そしてその器に神さまの氣が降りてきて、体が温かくなってきます。宮島の弥山の山頂近くにも、そうした大きな岩があります。
03家の中心で、掃除の前と後に
拍手は家でも使えます。家神様との関係、つまり家の氣の良し悪しを、音ではかることができるんです。
できれば、家の掃除をしようと思った日に試してみてください。掃除の前に、家のおおよその中心に立ちます。2階建てなら1階の中心がおすすめです。そこで拍手を4回打ち、その音を覚えておきます。掃除が終わったら、同じ場所でもう一度4回打ってみてください。まったく違う音に聞こえるはずです。
この違いが分かるようになると、自分の拍手の音が基準になります。出かけた先やホテルの部屋で打ってみれば、その場の氣を自分ではかることができます。
04氣が重いと感じたときに
拍手そのものに、氣を上げる働きがあります。「ここは氣が重そうだ」と感じたら、まず4回拍手を打ち、「ここにおわす家神様、この空間の氣を浄化し、安全安心に過ごせますようお願いいたします」とお伝えします。そしてもう一度4回打ってみてください。音が変わっていることと思います。
拍手は、神社のためだけの特別な作法ではありません。あなたの家の中心にも、旅先の部屋にも、山や川にも、音で向き合える相手がいます。小さな音を一つ鳴らすことが、祈りの入口になります。良い氣を、拍手で巡らせてみてください。
静かに、手を合わせてみてください。
よくあるおたずね
- 神社では2拍手ですが、家で4拍手してもよいのですか?
- かまいません。神社ではその神社の作法に従い、家や自然の中では私が学んだ4拍手で打っています。回数よりも、右手を少し下げて澄んだ音を出すことを大切にしてください。
- 高い音がうまく鳴りません。
- 右手を下げる幅が小さいと、合掌で打つ音に近くなります。左手の第一関節分をもう一度たしかめ、力を抜いて打ってみてください。
- 家神様とは何ですか?
- 家をお守りくださる神さまのことです。この記事では、その家に宿り、家の氣の状態を映す神さまとして受け止めています。
この記事のことば
- 拍手(かしわで)
- 神さまに向かって両手を打ち鳴らす作法です。神社の参拝では2礼2拍手1礼が一般的です。この記事では、邪氣を祓い神さまをお呼びする動作であり、場の氣をはかる手段でもあると受け止めています。
- 磐座(いわくら)
- 神さまが宿る、または降りる場所とされる岩のことです。古くから信仰の対象になってきました。
- 家神様(いえがみさま)
- 家を守る神さまのことです。この記事では、家の氣の状態を映す存在として受け止めています。
- 左上位(ひだりじょうい)
- 日本の伝統で、左を右より上の位とする考え方です。神事の作法の多くがこれに基づいています。
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