佐久間令宗ブログ / 姓・家系・ご先祖

霜降のころ 楓蔦黄(もみじつたきばむ)

「先祖」と「祖先」はどう違うのか——苗字をさかのぼると見えてくるもの

お墓参りで口にする「ご先祖様」は、誰のことを指しているのでしょうか。「先祖」と「祖先」という2つの言葉の意味を辞書で確かめたうえで、私の使い分けと、佐久間という苗字の由来を例に、苗字をさかのぼる面白さをお伝えします。

暮らしの便り公開 2026年11月6日更新 2026年11月6日4分で読めます

この記事の答え

辞書では「先祖」も「祖先」も、家系の初代という意味と、その家系に連なる過去の人々という意味の両方を持っています。私はこの2つを、「先祖」はその苗字を最初に名乗った一人、「祖先」はその人から今の自分までを繋いでくれたすべての人、と分けて受け止めています。苗字をさかのぼることは、その最初の一人に出会うことで、自分が誰なのかを知る手がかりになると考えています。

01「ご先祖様」は誰のことか

神社の祖霊舎にお参りするときや、お墓参りをするとき、私たちは自然に「ご先祖様」という言葉を使います。では、そのご先祖様とは、どの範囲の人を指しているのでしょうか。

辞書を引いてみると、「先祖」と「祖先」はほとんど同じ意味で説明されています。『デジタル大辞泉』では、「先祖」は家系の初代、またその家系に属した過去の人々とされ、「祖先」も家系の初代、また家系の先代以前の人々とされています1。つまり辞書の上では、どちらの言葉も「最初の一人」と「それ以後のみんな」の両方を含んでいます。

02令宗の使い分け

そのうえで、私はこの2つの言葉を、自分の中では分けて受け止めています。「先祖」は、その苗字を最初に名乗った一人。「祖先」は、その先祖から今の自分まで命を繋いでくれた方々すべて。 辞書の定義というより、私がご先祖様と向き合うときの受け止め方です。

ただし、今は「先祖」という言葉が、祖先と同じ広い意味で使われることがほとんどです。ですから私もこのブログでは、繋いでくださった方々全体を指して「ご先祖様」と書いています。言葉の定義にこだわりすぎるより、お参りするときに「最初の一人」と「繋いでくれたみんな」の両方を思い浮かべられることのほうが、ずっと大切だと思うからです。

03佐久間という苗字をさかのぼると

では、「最初の一人」とは、どんな人なのでしょうか。私につながる「佐久間」という苗字を例に、たどってみます。

佐久間は、古い地名の「狭隈(さくま)」に由来するというのが通説です。太田亮の『姓氏家系大辞典』がこの説を伝えています2。狭隈は、「サ(狭い)」と「クマ(入り組んだ、曲がった場所)」からなり、川の曲がった狭い谷あいを表す地名と説明されています。ほかにも説はありますが、地名から生まれた苗字であるという見方がもっとも広く知られています。

その発祥の地は、安房国平群郡狭隈郷。今の千葉県安房郡鋸南町佐久間にあたります。地図を開くと、その地名は今も残っています。

本流とされるのは、桓武平氏の流れをくむ三浦氏の一族です。三浦義明の孫にあたる佐久間家村が、最初に佐久間を名乗った人物とされています。この伝えに従えば、私につながる佐久間家の「先祖」は、狭隈の地を名乗ったこの一人ということになります。

もっとも、佐久間氏の出自はひとつではありません。藤原氏の流れを称する伝えや、陸奥国の佐久間氏など、別に語られる系統もあります。私の佐久間家がどの流れにあたるかは、ここでは書きません。それでも、「狭隈という土地を名乗った一人がいて、そこから命が繋がってきた」と思うだけで、自分の名前の重みが変わってきます。

04名前に興味を持つことは、自分を知ること

このように、苗字をさかのぼってみると、さまざまなルーツに出会えます。日本の苗字の多くは、佐久間のように土地の名から生まれ、多くの家が古い武家や皇室の流れを称しています。ですから、今世で出逢う人との接点も、たどってみると親戚のように近かったりします。日本の苗字は、これが分かるから面白いのです。

日本は歴史や伝統を大切にする国ですが、そのいちばん身近なものは、あなたの名前です。自分が名乗っている名前に興味を持つことは、自分自身を知ることに繋がります。私は、それだけで人は元氣になる、エネルギーが上がると受け止めています。

これはあなたにも当てはまります。あなたの苗字にも、最初に名乗った一人がいて、そこから今のあなたまで、途切れずに命が繋がってきました。次にお墓参りをするときは、その「最初の一人」と「繋いでくれたみんな」の両方を、少しだけ思い浮かべてみてください。

参考文献

  1. 1『デジタル大辞泉』小学館(コトバンク掲載)「先祖」「祖先」の項。 https://kotobank.jp/word/%E5%85%88%E7%A5%96-550445↩
  2. 2太田亮『姓氏家系大辞典』角川書店、1963年。↩

静かに、手を合わせてみてください。

よくあるおたずね

「先祖」と「祖先」は、どちらを使えば正しいですか。
辞書ではほぼ同じ意味なので、どちらを使っても間違いではありません。私は「先祖」を最初の一人、「祖先」をそこから今までのすべての人と分けて受け止めていますが、これは私の使い分けです。
自分の苗字の由来は、どうやって調べればいいですか。
まず太田亮『姓氏家系大辞典』のような姓氏辞典で、苗字の由来と発祥地を確かめるのが入口です。戸籍をさかのぼって直系の先祖の地名と照らし合わせると、自分の家がどの流れに近いかの手がかりになります。
佐久間という苗字は、全部が三浦氏の流れですか。
本流は桓武平氏三浦氏流とされますが、藤原氏の流れを称する伝えや、陸奥国の佐久間氏など、別の系統も語られています。自分の家がどの流れかは、戸籍や記録で確かめる必要があります。

この記事のことば

祖霊舎(それいしゃ)
家のなかでご先祖様の御霊をおまつりするための棚、または社の形をしたものです。神棚とは別に設けます。
狭隈(さくま)
安房国平群郡にあった古い郷の名で、今の千葉県安房郡鋸南町佐久間にあたります。佐久間という苗字の由来とされる地名です。
桓武平氏(かんむへいし)
桓武天皇の子孫で平の姓を賜った一族です。三浦氏はその流れをくむ武家のひとつと伝えられています。
用語集を見る

この記事を読んだ方へ

ご自分の苗字も、たどってみませんか。

LINE苗字診断でも試せます

もっと深く知りたい方へ

姓氏研究レポート

あなたの家の苗字の由来と系統を、史料にあたって調べてお届けします。

48,000円 くわしく

あわせて読む

論考と連載2026年10月16日見えない世界の理ことわり

失われたのは横のつながりではない ― 神棚のない家で、私たちが手放したもの

同じ季節の記事

2026年10月31日霜降のころ

顔も声も偽物になる時代、資本主義を支える「信用」が崩れ始めた

2026年10月30日霜降のころ

祝詞とお経の違い——声の向きが変わると、祈りが変わる

2026年10月26日霜降のころ

言霊と日本語の母音――音声学で分かっていることと、先人の受け止め

来年の霜降のころには、この欄に新しい記事が加わります。

この記事を書いた人

佐久間令宗さくま れいしゅう

和氣清麻呂公の流れを汲む和氣生京先生の祈りを受け継ぎ、祖霊祭と土地・建物の神事を執り行っています。また、広島を拠点に、地震鎮めと世界平和を祈る活動をしています。

著者について詳しく

いのりの宮で、ご一緒に

毎月1日と15日の朝7時に、拝神を配信しています。LINEにご登録いただければ、どなたでも無料でご覧いただけます。

LINEに登録する